「行政書士の年収はどれくらい?」と検索すると、「平均〇〇万円」という断定的な数字を目にすることがあります。しかし行政書士は、他の士業と比べても開業する人の割合が非常に高い資格です。同じ資格を持っていても、勤務先や働き方、専門分野によって収入の差が極めて大きいのが実情です。
この記事では、勤務型と開業型それぞれの収入の目安、開業初期に想定しておきたい収入の幅、そして専門分野による違いを、公的統計や業界情報をもとに整理します。
結論
行政書士の年収は、事務所や企業に勤める「勤務型」と、自分で事務所を構える「開業型」で傾向が大きく異なります。勤務型はおおむね一般的な会社員に近い水準が目安となる一方、開業型は収入の個人差が非常に大きく、開業直後は収入が不安定になりやすい傾向があります。実務経験を積み、建設業許可や在留資格(ビザ)申請などの専門分野を持つことで、収入を安定させやすくなるといわれています。
行政書士の年収は「平均」で語りにくい資格
行政書士の年収を考えるうえでまず押さえておきたいのは、多くの資格保有者が独立開業を選ぶという点です。企業や事務所に雇用される「勤務型」はどちらかというと少数派で、資格取得後に自分の事務所を構える「開業型」が主流とされています。
このため、行政書士全体の「平均年収」という数字は本来なじみにくい面があります。会社員のように毎月決まった給与を受け取る人もいれば、案件ごとの報酬で生計を立てる個人事業主もいるため、両者を単純に合算した平均値は実態を表しにくいのです。
厚生労働省が実施する「賃金構造基本統計調査」では、行政書士は他の一部の専門職とあわせて「他に分類されない専門的職業従事者」という区分に集計されており、これは雇用されて働く人(勤務型に近い層)の給与データが中心です。開業して働く行政書士の収入は、この統計にはほとんど反映されていません。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」概要(最終確認 2026-07)
行政書士は開業する人が多いため、「平均年収〇〇万円」という単一の数字だけで実態を判断するのは難しい資格です。
勤務型行政書士の年収の目安
行政書士事務所や、総務・法務部門に行政書士資格を活かせるポジションを持つ企業に勤務する場合、収入は一般的な会社員に近い形になります。
- 未経験・実務経験が浅い時期:年収300万円台前後からのスタートが目安とされることが多い
- 実務経験を積んだ層:年収400〜500万円前後が一つの目安といわれる
- 管理職や専門性の高いポジション:年収600万円前後、あるいはそれ以上になるケースもある
これらはあくまで一般的な目安であり、勤務先の規模・地域・業務内容によって幅があります。行政書士事務所は個人経営や小規模なところも多く、企業の給与水準とは異なる場合がある点にも注意が必要です。資格手当が支給される企業もありますが、金額や有無は勤務先によって異なります。
勤務型の年収は、実務経験や勤務先の規模によって300万円台〜600万円前後まで幅がある、というのが目安です。
開業型行政書士の収入の幅は非常に大きい
行政書士の年収を語るうえで最も特徴的なのが、開業型の収入の個人差の大きさです。開業行政書士は、案件を受任した分だけ報酬を得る仕組みのため、集客力・専門分野・営業経験の有無によって収入が大きく変わります。
業界団体が実施した実態調査(複数年にわたる調査結果を総合すると)では、開業行政書士の年間売上高は500万円未満の層が全体の7割前後を占めるという結果が繰り返し報告されています。一方で、専門分野を確立し、法人顧客との継続的な取引を持つ行政書士の中には、売上高が1,000万円を超える層も一定数存在します。
「開業すれば高収入」というイメージを持たれることもありますが、実際には廃業を選ぶ人も少なくありません。売上が安定するまでには一定の準備期間がかかる、という前提で考えることが大切です。
つまり開業型は、「収入が低い層が多く、一部に高収入層がいる」という分布になりやすく、平均値だけを見ると実態を見誤りやすい構造になっています。
開業型の収入は個人差が非常に大きく、多くは年間売上500万円未満の水準からのスタートになりやすい傾向があります。
開業初期に想定しておきたい収入の幅
開業直後は、顧客基盤がまだない状態からのスタートになるため、収入がゼロに近い期間が続くことも珍しくありません。目安として、以下のような段階を想定しておくと計画が立てやすくなります。
- 開業1年目:営業活動や実績づくりが中心となり、収入が安定しない時期が続くことが多い
- 開業2〜3年目:紹介やリピート案件が徐々に増え、収入が上向き始めるケースが目安として語られる
- 開業4年目以降:専門分野が確立し、継続顧客を持てると収入が安定しやすくなる傾向
上記のグラフは複数の業界実態調査の結果を目安として整理したものであり、年度や調査対象によって数値は変動します。開業を検討する際は、当面の生活費や運転資金をどの程度確保しておくかも合わせて考えておくことをおすすめします。
開業初期は収入が不安定になりやすいため、軌道に乗るまでの期間を見込んだ資金計画が重要です。
専門分野によって収入は大きく変わる
行政書士が扱える業務は非常に幅広く、どの分野を専門とするかによっても収入の傾向が変わってきます。代表的な専門分野の例は次のとおりです。
建設業許可
建設業許可の新規申請・更新・変更届などを専門とする分野です。建設会社との継続的な顧問契約につながりやすく、安定収入を得やすい分野の一つとされています。
在留資格(ビザ)申請
外国人の就労ビザ・在留資格認定証明書交付申請などを扱う分野です。近年は企業からの外国人材受け入れニーズが増えており、専門性を確立すると単価の高い案件を継続的に受任しやすいといわれています。
相続・遺言関連
遺言書作成支援や相続手続のサポートを行う分野です。個人向け業務が中心となるため、案件単価は建設業許可などに比べて幅がありますが、地域密着で安定した依頼を得ている事務所もあります。
いずれの分野も、単に資格を持っているだけでなく、実務経験と専門知識の蓄積が収入に直結します。特定分野に絞って専門性を高めることが、収入を安定させる有効な戦略の一つとされています。
ある分野に特化した行政書士からは「資格を取ってすぐより、専門分野を決めて経験を積んでから収入が安定した」という声も聞かれます。専門性は一朝一夕には身につかないため、中長期的な視点でキャリアを考えることが大切です。
建設業許可や在留資格申請など専門分野を確立できると、収入の安定につながりやすい傾向があります。
まとめ
行政書士の年収は、勤務型か開業型か、そして専門分野や実務経験の有無によって大きく異なります。
- 勤務型は一般的な会社員に近い水準が目安(年収300万円台〜600万円前後)
- 開業型は個人差が非常に大きく、多くは年間売上500万円未満からのスタート
- 建設業許可や在留資格申請などの専門分野を確立すると収入が安定しやすい
「行政書士=高収入」とも「行政書士=稼げない」とも一概には言えないのがこの資格の実態です。どの働き方を選ぶかによって必要な準備も変わってくるため、まずは行政書士とは何かや行政書士の仕事内容を確認したうえで、自分に合ったキャリアをイメージしてみてください。
行政書士の年収は働き方次第で大きく変わるため、「取得後どう働くか」を早い段階からイメージしておくことが大切です。
あわせて読みたい
よくある質問
Q. 行政書士の平均年収はいくらですか?▼
A. 行政書士は開業する人の割合が高いため、単一の「平均年収」で実態を語ることは難しい資格です。勤務型は年収300万円台〜600万円前後が目安とされる一方、開業型は個人差が非常に大きく、目安として語るには幅を持たせる必要があります。
Q. 開業したらすぐに稼げるようになりますか?▼
A. 開業直後は顧客基盤がないため、収入が不安定になりやすい傾向があります。実態調査でも開業行政書士の年間売上高は500万円未満の層が多いという結果が繰り返し報告されており、軌道に乗るまでの資金計画を事前に考えておくことが大切です。
Q. 勤務型と開業型ではどちらが収入面で安定していますか?▼
A. 一般的には、勤務型のほうが毎月の収入は安定しやすい傾向があります。開業型は案件ごとの報酬制のため収入の波が大きくなりやすい一方、専門分野を確立し継続顧客を持てれば、勤務型を上回る収入を得ている人もいます。
Q. 収入を上げるためにはどの分野を専門にするとよいですか?▼
A. 建設業許可や在留資格(ビザ)申請などは、企業との継続的な取引につながりやすく、収入の安定に寄与しやすい分野として挙げられることが多いです。ただし需要は地域や時期によっても変動するため、自分の強みや関心と照らし合わせて選ぶことが重要です。
Q. 実務経験がなくても開業できますか?▼
A. 制度上は実務経験がなくても開業は可能です。ただし、実務経験や専門知識が乏しい状態での開業は案件獲得に時間がかかりやすいため、勤務型行政書士や関連業務での経験を積んでから独立する人も少なくありません。